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東京高等裁判所 昭和42年(ネ)2412号 判決 1968年11月13日

被控訴人 光信用金庫

理由

一  訴外会社が被控訴人に対し、原判決別表記載の定期預金・積金・債権合計一三、六一四、四一八円をもつていたことは、当事者間に争がなく、《証拠》を総合すると、昭和三九年一月一三日に被控訴人が訴外会社に対し手形貸付の方法により金銭を貸し渡す旨の取引契約(乙第一号証の一)が成立し、右契約にもとづく債権を担保するため、被控訴人は、その主張のとおり、訴外会社の前記定期預金・積金債権に根質権の設定をうけ、定期預金証書・定期積金通帳の交付をうけたうえ、右貸付契約にもとづいて、昭和四〇年三月二二日被控訴人は訴外会社に対して合計二、〇二五万円を貸し付けた(乙第七号証)ことが認められる。

二  右事実によれば、被控訴人は、訴外会社に対する貸付金二、〇二五万円の債権担保のため、訴外会社の右定期預金・積金債権一三、六一四、四一八円のうえに第三者に対抗できる質権を有していたものというべきである。したがつて、その後である昭和四〇年五月に控訴人が右定期預金債権の内金九五五万円を差し押え転付命令をえたことは、当事者間に争がないが、被控訴人は、その質権により、控訴人に優先して右債権からの弁済をうけうべきところ、《証拠》によれば、被控訴人は、訴外会社が昭和四〇年五月一日に取引停止となり被控訴人の訴外会社に対する前記貸付金債権はすべて弁済期が到来したので、その数日後に訴外会社の前記預金並びに積金債権を直接取立ることにより質権を実行したことが認められるので、この質権実行の日が、右転付命令が被控訴人に送達された日の先であるか後であるかにかかわりなく、控訴人の差し押えた債権を含め右定期預金・積金債権は全部消滅したものというべきである。よつて、控訴人の請求を棄却した原判決の判断は、結局において正当であるから、本件控訴を棄却。

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